
千代田グループのCSR活動を考える
経営理念の実践が、持続可能な社会の実現に向けた千代田グループのCSR活動です
ビジネス業界から幅広い支持を得ている企業変革コンサルタントの小笹芳央氏と久保田社長が、千代田グループのCSRについて語り合いました。
千代田化工建設(株) 代表取締役社長久保田 隆
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(株)リンクアンドモチベーション 代表取締役社長小笹 芳央
小笹(文中敬称略、以下同) 御社は、経営理念の実践がCSR活動そのものであるとされ、1970年代から環境問題に積極的に取り組まれるなど、今のようにCSRが叫ばれる以前からさまざまな活動を展開されてきていますね。
久保田 当社の前身は三菱石油(株)(現 JX日鉱日石エネルギー(株))の工事部ですが、第二次世界大戦で太平洋沿岸のほとんどの製油所が壊滅したため、将来の復興の備えとして、技術部隊を残そうということで設立されました。1948年の創業当時は、「技術による社会への奉仕」を理念に、エンジニアリング力で戦後日本のエネルギーの安定供給体制を実現させ、日本の復興に貢献してきました。 一方、1960年代から1970年代の高度成長期にはエネルギー需要が大幅に伸び、燃料も石炭から石油に転換する中で、公害問題がクローズアップされてきました。何とかしなければということで、石油製品の脱硫装置や発電用ボイラーなどの排煙脱硫装置と、製油所などの工場設備からの排水処理という2つを軸にして、「限りある地球、資源だから、エネルギーと環境の調和」をテーマに技術開発をしながら、その技術によって社会に貢献していこうという流れができたのです。
小笹 どの企業も独自のDNAを持っていますが、御社は創業時から明快なDNAをお持ちだったわけですね。DNAに影響する要因として、その企業が①どのぐらいのレンジで物事を捉えているかという時間観、②どこまでを視野に入れて活動しているかという空間観の2つがあります。御社の場合は、プラントの建設から、メンテナンスまで含めると何十年という長期にわたり、顧客と技術的な関わりを続けておられるために、長い時間観で物事を判断され、今は良くても、将来の社会に迷惑をかけることはやめようという、制御が働くのだと思います。空間観では、エネルギーの先の環境までを視野に入れている。そういう時間意識、空間意識のDNAを持っているため、理念をそのまま実践して当たり前のことをやっているんだ、何を今さら騒いでいるのかという意識がおありになるんじゃないでしょうか。
久保田 そうですね。天然ガスなどのエネルギープラントはガスを掘り当てプラントが完成するまで10年かかり、さらに運転開始から少なくとも30年は稼働しますから全部で半世紀近くになります。当社では、完工保証に加えて一定期間の性能保証まで含めないと資源国の経済発展にはつながらないということで、現在はプラントをつくり上げた後のオペレーションやメンテナンスまでをお手伝いしています。
小笹 私がいろいろな会社を見てきて、長いレンジでおつき合いしなければならない事業をしている会社と違って、物を売り切って終わりという事業をしている会社では、利他的意識よりも、自分たちだけ得すれば良いという意識が芽生えがちです。それこそ10年、20年、30年というレンジでのプロジェクトの場合、本当の意味で他者を生かしてこそ自分たちにも利があるという、そういう意識が芽生えるのだろうと感じました。
久保田 いわば、WIN-WINの関係です。それが当たり前だと思っています。創業時の理念は①人材育成、②技術と信頼、③国際社会への貢献の3つですが、それは今でも変わりません。そしてこれらを実現するために一番重要なのがコミュニケーションであるとの風土が受け継がれています。当社のプロジェクトは多種多様な技術の組み合わせで、多種多様な人間が一つの目標に向かって長期間一緒にやっていくわけですから、円滑なコミュニケーションが非常に重要です。
小笹 そういう意味ではコミュニケーションをエンジニアリングするというのも大事ですね。コミュニケーションも構築していくものですから。御社と規模はまったく違いますが、私も会社の経営者として、コミュニケーションの柱、上下の縦柱であったり、左右を貫く横柱だったりをどう構築していくか、その上で人間の体で言えば血液である情報を流していくわけで、コミュニケーションラインという建造物をどうつくっていくかということを常々腐心しています。
フローの表層的な情報ではなく、深層にある普遍的な要素技術や枠組みというもののほうが、長い時間役に立ちますし、フローで流れている表層的な情報は、今日使えても1年後は使えないということになります。そういう普遍性のようなものを意識としてお持ちなのですね。
久保田 おっしゃるとおり、人間社会では、表面はすごく変わっていても、根っこのところはそれほど変わっていないことが多く、逆にその都度、新しい目で根っこを見直せば、別の何かが生まれるのだろうと思っています。
小笹 御社はカタールで資源開発と地球環境に大きな貢献をされていますね。プロジェクトの特徴、意義について教えてください。
久保田 カタールの沖合に世界でも有数のガス田が発見されて開発が始まり、当社グループの同国でのLNGプラントプロジェクトへの関わりは、1990年代初めから継続的に20年近く続いています。現在、世界のLNG生産量の約3分の1にあたる7,700万トンをカタールで生産していますが、すべての生産設備のエンジニアリングを手がけてきました。首都ドーハは今でこそ高層ビルが立ち並んですばらしい町になりましたが、20年前は小さな漁村でした。開発が進むにつれ現地の人たちの生活も良くなるし、町もきれいになるのですが、地域社会の発展に寄与するためには何が必要かというのが大きなポイントでした。プロジェクトのピーク時には75,000名にのぼる建設従事者が集まって来ましたが、そのほとんどがカタール以外の80カ国以上から集まって来たわけです。地元に何かを残すべきだと考え、納めたプラントの保守、点検を行う会社を3年半前につくり、徐々に現地の若いエンジニアをトレーニングしながら根づかせようと取り組んできました。
今回の震災において、カタールは日本の電力会社向けにLNG400万トンをすぐに追加提供すると申し出てくれました。これは、これまでの長いつき合いがあるからこそです。改めて、プラント建設では地元に何を根づかせることができるかを考え、現地コミュニティーとの信頼関係を築くのが一番大事だと痛感しました。
また、当社では国内のLNG受入基地の建設でも1960年代より多数の実績を有しており、エネルギーの安定供給にも寄与しています。

小笹 今回の東日本大震災からの復旧・復興に際しては、御社の果たす役割は大きいのではないでしょうか。
久保田 最初に、被災者の皆様に、心からお見舞い申し上げます。青森から関東まで、当社グループの顧客は十数社あり、多くの工場をお持ちですが震災で被害を受けました。震災直後に当社技術者が訪問し、設備診断後すぐに復旧支援工事を始めました。現在、「復興支援対策本部」を設置し数十カ所で同時並行して、千代田グループを挙げ、1日も早い復興を願いお手伝いしています。このような復旧・復興支援は長い目で見たら「信頼」という形で結びついていくものと思っています。また、日本のサプライチェーンを結びつける重要さが改めてよくわかります。
小笹 今までふだんの生活では目に見えなかったつながりが、震災によって切れたことで顕在化したということですね。逆に言えば御社のような仕事というのは、つながりを自然に意識するような長期レンジと視界の中で活動されているということだと思います。「信頼」という言葉は、そういうつながりを意識されないと出てこない言葉です。
戦後の日本の復興、日本の成長、また世界の成長を支えられてきた御社にとっては、今回の震災に際して、御社が復興に携わっていくというのは当然のことなのですね。
久保田 プラントや産業設備の建設、保守、点検、修復に関してはプロフェッショナルだという意識を持っており、それが一番の誇りにもなっていますので、自然の行動なのです。
小笹 御社のDNAの一つに「人材育成」を挙げられていますが、プロジェクトにおける人材育成はどのようにされているのですか。
久保田 私は1987年から8年ほどインドネシアに赴任していました。カリマンタンにあるLNGプラントの増設工事に従事しましたが、最初に受注した際に、インドネシア政府から地場のエンジニアリング企業を育成してほしいという条件がつき、ピーク時には設計、調達、施工のエンジニアなど当社社員40名程にジャカルタに赴任してもらって、進めました。この会社は当時150名規模でしたが、8年後には1,500名規模の会社に成長しました。インドネシア時代での経験を通じて学んだことは、①相手と同じ目線に立つこと、②相手を尊重することの2つを礎に、工事現場では安全を最優先にして進めることでした。
安全は私たちにとってコアであり、すべてのステークホルダーとの信頼を築くベースとして関係者全員に繰り返し教育しています。
小笹 現在推進中の2012年度をターゲットとする中期経営計画では、「変革と創造」をテーマに新エネルギー分野など新たな領域の開拓にも挑戦されています。その実現と、さらにその先に向けて、今後の人材育成に関してどのようにお考えですか。
久保田 繰り返しになりますが、創業当時から「人材」は当社のキーワードであり、理念の一つとなっています。私は、社員には知力を持った人間になってほしいと話しています。知力というのは、知識と胆力を足し合わせたもので、これを持った強く、活気にあふれた社員になってほしいという意味をこめたメッセージです。
そのためには歴史や古典に親しみ、いろいろな人とのコミュニケーションを通して、相手の人となりをよく理解できるような知識や力を持ってほしいと願っています。そうすることで、私たちの事業推進に必要な、細心にして大胆な決断ができるような強い人間になってほしい。強い社員になれば、おのずと集合体である会社は強くなりますし、持続可能な社会の発展に貢献できますので、それを目指していきたいと思っています。
小笹 私は常々社員には、「i-Company(注)」意識を持てと言っています。会社に属する社員であろうとも、それぞれが自分株式会社であるという意識を持って、それを繁栄、発展させるために、自分の頭で考えて、会社と自分の成長をリンケージさせていくべきだと。主体性、当事者意識を持った人は少なくなっている気がしますので、自分が何とかするんだという気概を持った若い人たちが増えるよう、育んでいくべきと思っています。
(注) アイカンパニー。自分自身を一つの株式会社に見立て、その経営者として優良企業に成長させていくという、会社に依存せず、自立的に自らのキャリアを形成していく考え方。
小笹 最後に、変化が激しい時代ですが、今後千代田グループはどのような挑戦をしていくのでしょうか。
久保田 人間の生活に必要な社会インフラを恒常的につくりながら、社会の発展に寄与していく、ということに尽きます。各時代の社会要請に沿って経営理念を軸とし、自分たちが貢献できる分野を見据えながら行動するというのがポイントだと思います。
小笹 深層構造は変わらず、表層的な活動領域は時代に合わせて変わるということですよね。
千代田グループのCSRは経営理念に基づいた事業への取り組みそのものであると理解しました。御社の今後の活躍に期待しています。
小笹 芳央(おざさ よしひさ) 1961年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、(株)リクルートに入社。人事部では採用活動などに携わる。組織人事コンサルティング室長などを経て独立。2000年、モチベーション(動機づけ)を切り口に開発されたモチベーションエンジニアリングを基幹技術とした(株)リンクアンドモチベーションを設立。現在同社を中核にグループ8社による事業を展開している。最新刊『「持っている人」が持っている共通点』(幻冬舎新書)ほか著書多数。